【Q】
(1)地球の潮汐が1日2回ある理由を教えて下さい。満月時は太陽と月の引力にて地
球が両側から引っ張られ,海面が伸びることで潮汐が2回,新月時は片側のみからしか引っ張られないため1回の潮汐しかない,と考えていますが,いかがでしょうか。
(2) 潮汐と同様,太陽と月の引力によって地球本体も伸縮していると考えますが,最大でどのくらいの差があるのでしょうか。 (埼玉県 K)
【A】
(1)地球の潮汐が1日2回ある理由
潮汐力には常識を裏切るようなところがあり,かのガリレオも解釈を間違ったほどで,今回のご質問ももっともなことと感じられました。
まず,海水・地球・月の3体で考えます。図1をご覧下さい。月の引力は地球と周囲の海水(代表点A,B,C,D)に作用しています。月に面したAでは,月に近いため最も引力が強く,反対のCでは最も弱くなります。BとDは地球中心とほぼ同じ距離ですから,地球中心と同じ強さの引力がかかっているとみなせます。そこで,地球中心にかかる引力との差を見ると,Aではプラス,Cではマイナスとなるでしょう。この力の差こそが潮汐力の正体にほかなりません。つまり,Aでは強く引かれて満潮となり,Cでは力が弱いために海水が取り残されて満潮になる,というわけです。
太陽による潮汐力は月の半分ほどですが,作用は同じことです。太陽と月の方向が同じ満月,新月時には潮汐力も同じ向きになって加算されますので,ご質問のようにはなりません。なお,半月のときは潮汐力も直交するため相殺されますので,小潮になります。ところが,この潮汐力で海水の上昇量を求めると1mmにもなりません! 実際の潮汐では,水平分力と言われるBとDにおける力が大きく効いているのです。B,D点は地球とほぼ同じ距離ですから,引力にさほど差はありませんが,地球中心から外れているため,斜めから働き,地球中心方向に向かう力が発生します。この水平分力によって海水が移動するというのが正しいようです。
(2)太陽と月の引力の地球本体への影響
地球本体にも潮汐力が作用しているだろうとは,鋭いご指摘ですね。その通りで,地球全体が潮汐力による変形を起こしていて,地球潮汐と呼ばれています。最大30cm程度のようです。なお,つくば市の高エネルギー物理学研究所(現・高エネルギー加速器研究機構)にあった加速器トリスタンでは潮汐力による大地の変形による電子ビームの位置変動が観測されたことがありましたから,まったく無視はできないようです。