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原発性副甲状腺機能亢進症における画像診断陰性例への対応

No.4717 (2014年09月20日発行) P.61

日比八束 (藤田保健衛生大学医学部内分泌外科准教授)

登録日: 2014-09-20

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

原発性副甲状腺機能亢進症において,超音波検査装置の解像能の進歩,99mTc-MIBI(methoxyisobutyl isonitrile)シンチグラムへの保険適用などにより,病的副甲状腺腫大の術前局在診断の成績は向上しています。一方,画像診断陰性の原発性副甲状腺機能亢進症症例も依然として存在しており,異所性副甲状腺および過剰腺といった解剖学的バリエーションや多腺腫大の可能性を考慮すると,画像診断陰性の原発性副甲状腺機能亢進症,特に軽症例を手術適応とすることに躊躇します。藤田保健衛生大学・日比八束先生はどのように対処されているのでしょうか。
【質問者】
今井常夫:愛知医科大学乳腺・内分泌外科教授

【A】

目下のところ,原発性副甲状腺機能亢進症における病的腫大腺の局在診断は主に頸部超音波検査および99mTc-MIBIシンチグラムによってなされると思います。近年の頸部超音波検査の画像解像度の進歩は目覚ましく,甲状腺結節や腫大リンパ節などの鑑別もかなり可能になっています。また99mTc-MIBIシンチグラムはSPECT-CT画像にfusionすることで,より具体的な位置情報を示してくれるようになりました。
しかし,実際に原発性副甲状腺機能亢進症の診療にあたっていると,画像診断陰性か,あるいは不明瞭な結果のため,手術適応の決定に悩まされることは確かにあります。また,原発性副甲状腺機能亢進症においては,副甲状腺ホルモンの上昇を認めていても,疾患特有の症状を有さない症例が存在し,これまでその外科的治療の根拠および適応については議論がなされ続けてきました。
過去2回の国際ワークショップを経て,2008年の“The third International Workshop on the Management of Asymptomatic Primary Hyperparathyroidis”では,新しいガイドラインが提唱され,(1)血中Ca値が正常値上限より1.0mg/dL以上,(2)クレアチニンクリアランスが60mL/分未満,(3)骨塩定量でTスコアが -2.5未満(測定部位の指定なし),(4)年齢が50歳未満,を手術適応とすることが提示されました。
一方,わが国の各施設では基本的にこのガイドラインを遵守している施設もあれば,各自の基準・判断を用いて手術適応を決定している施設も多々あるのが現状と思われます。私たちの施設で過去10年に施行した91例の原発性副甲状腺機能亢進症症例(家族性症例を除く)の画像診断の感度は頸部超音波検査では89%,99mTc-MIBIシンチグラムでは88%でした。また,両者とも陰性であったのは3例(3.3%)のみでしたが,手術を施行し両側頸部検索で責任病変を摘出しえました。
画像診断陰性例に対しては,患者さんに手術で病的腫大腺が摘出できない可能性を重々言及した上で,可能性としては画像診断陰性例でもかなり高い確率で手術で治癒しうることを説明し,積極的に両側頸部検索による手術を勧めています。また,無症候性副甲状腺機能亢進症例の手術適応に年齢制限は設けず,さらに血中Ca値11mg/dL以上(正常値上限より+0.6mg/dL)を手術適応として,画像診断陰性例と同様に考えています。

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