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腎血管性高血圧症疑い患者の 診断と治療方法選択

No.4724 (2014年11月08日発行) P.48

岩嶋義雄 (国立循環器病研究センター病院高血圧・腎臓科医長)

登録日: 2014-11-08

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

利尿薬を含む3種類の降圧薬でも140/90 mmHg未満にならない治療抵抗性の患者さんで腹部血管雑音を認めました。腎血管性高血圧症(renovascular hypertension:RVH)を疑った場合の鑑別診断法およびRVHと確定診断した場合の経皮的腎動脈形成術(percutaneous transluminal renal angioplasty:PTRA)と降圧薬治療の選択を,最近のエビデンスの解釈も含め,国立循環器病研究センター病院・岩嶋義雄先生に。
【質問者】
梅村 敏:横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学教室 教授

【A】

RVH診断のための検査には,血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)の測定,腎シンチグラフィ,カプトプリル負荷試験などの機能的診断と,腎動脈超音波,MRアンギオグラフィ(MRA),CTアンギオグラフィ(CTA)などの形態学的診断があります。
「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)が発表されましたが,これまでスクリーニングとして推奨されていたPRAについては,体位や年齢,降圧薬,食塩摂取量などに影響を受けることや,両側性の腎動脈狭窄症などでは高値にならないこともあり,補助的な検査とされています。
腎動脈超音波は,非侵襲的な評価が可能なことから第一に考慮すべき検査です。RVHでは,腎動脈の狭窄部位での収縮期最大血流速度(peak systolic velocity:PSV)の上昇が認められます。同検査で狭窄が確定できない,もしくは,同検査の施行が困難な場合には,MRAやCTAを用いた評価が推奨されます。これらは比較的簡便ですが,造影剤の使用による腎機能悪化のリスクがあるので,腎機能障害を伴う場合や,造影剤の使用が望ましくない場合には非造影MRAでの評価が推奨されます。腎動脈造影検査は,腎動脈狭窄の診断としてゴールデン・スタンダードですが,侵襲的な検査であり,手技に伴う合併症の懸念があります。
治療法としては血行再建術(バイパス手術や腎移植を含む)や薬物治療があります。PTRAについては,適応に注意する必要があります。JSH 2014では,血行動態的に有意な腎動脈狭窄症を有しており,(1)治療抵抗性高血圧,(2)増悪する高血圧,(3)悪性高血圧,(4)原因不明の片側萎縮腎を伴う高血圧,(5)突然発症で原因不明の肺水腫,(6)繰り返す心不全,(7)不安定狭心症,(8)線維筋性異形成(fibromuscular dysplasia:FMD),を有する患者,また,両側性の腎動脈狭窄症,機能している単腎の腎動脈狭窄症を伴う進行性腎障害に対して,施行を考慮してもよいとされています。
薬物治療では,レニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system:RAS)を阻害するACE阻害薬(angiotensin-converting enzyme inhibitor:ACEI)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensinⅡ receptor blocker:ARB),β遮断薬が効果的ですが,両側性腎動脈狭窄症例においてはACEIとARBは原則禁忌です。ACEIやARBは少量より開始し,腎機能の急速な悪化を認めた場合は他の降圧薬に切り替えます。カルシウム拮抗薬はRASへの影響が少なく,α遮断薬も使用可能です。利尿薬はRASを亢進させますが,腎不全を伴うときには適応になります。
PTRAについては,これまでの大規模臨床試験において,降圧薬のみの治療と比べて優れた治療効果は証明されていません。治療効果の期待できる対象者を明らかにするためには,今後の検討が必要と考えられます。

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