【Q】
保存的治療に抵抗性の片側性上顎洞炎(副鼻腔炎)で根尖病巣が疑われる症例にしばしば遭遇します。上顎洞炎に対しては手術療法も検討しますが,原因歯に対しては抜歯や歯内療法が必要か,判断に苦しむ場合も少なくありません。また,副鼻腔手術を行う場合,歯科治療と同時期でもよいか,どちらかを優先させたほうがよいのか悩む場合もあります。佐藤クリニック・佐藤公則先生は,歯科治療の必要性やその時期についてどのようにお考えでしょうか。【A】
歯性感染症としての歯性上顎洞炎の病態が最近変化しています。特徴的なのは,未処置の齲歯(歯髄死歯)が歯性上顎洞炎の原因歯になることは稀になり,修復治療,歯内療法などの歯科治療後の歯が原因歯になる例が多くなったことです。最も多い原因歯は,歯内療法の際に根管処置(抜髄,根管充塡)が根尖部の根管まで十分に行われていない根管処置歯です。したがって,歯科治療後の歯で口腔内所見上齲歯がなくても,歯性上顎洞炎の原因歯として疑うことが非常に大切です。
▼ 佐藤公則:現代の歯性上顎洞炎─医科と歯科のはざまで. 九州大学出版会, 2011.
▼ 佐藤公則:日耳鼻会報. 2001;104(7):715-20.
▼ 佐藤公則:耳鼻臨床. 2006;99(12):1029-34.
▼ 佐藤公則:日歯評論. 2013;73(12):73-83.