世界初の肺移植は1963年,ミシシッピ大学での左肺移植であるが,患者は術後18日目に腎不全で死亡した。わが国では65年に東京医科大学での左肺下葉移植後,合計3例の肺葉移植が行われたが,生着は得られなかった。
免疫抑制剤シクロスポリンの登場で,83年にToronto Lung Transplantation Groupが片肺移植を成功させると(文献1),90年以降に肺移植は世界に広がり,現在では世界約120施設で年間3000例以上の肺移植が行われ,累積は4万5000例を超えている(文献2)。術式も片肺移植から両側肺のen block移植,両側各々の片肺移植,心肺同時移植などが行われている。わが国では脳死の議論から移植医療は出遅れ,97年10月の臓器移植法により脳死移植が法律的に可能となり,第一例目の脳死片肺移植が2年半後の2000年3月に行われたが,その後は年間10数例の施行であった。
10年の改正臓器移植法施行で臓器提供者の条件が緩和され,脳死肺移植件数は増加したが年間50例程度にとどまっている。13年までのわが国の脳死肺移植総数は199例,移植後5年および10年生存率は73.7%,61.9%で,国際登録の成績53.1%,31.3%に比べてきわめて良好である(文献2,3)。
現在,国内の肺移植実施認定7施設に加え2施設が追加認定された。今後は提供肺の一部利用やサイズマッチの再検討など,さらなる移植条件の緩和による症例の増加が期待されるが,提供者の増加が何より重要である。
1) Toronto Lung Transplantation Group:N Engl J Med. 1986;314(18):1140-5.
2) ISHLT home page [http://www. ishlt.org]
3) 日本肺および心肺移植研究会:移植. 2013;48(6): 374-7.