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体幹部定位放射線治療

No.4706 (2014年07月05日発行) P.60

加藤徳雄 (北海道大学病院放射線治療科)

登録日: 2014-07-05

最終更新日: 2016-10-26

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ガンマナイフや直線加速器(リニアック)を用いて放射線ビームを1mm以内の精度で頭蓋内病変に対して正確に集中させることが可能な「定位放射線治療」が,日本では1990年頃より開始された。同様のことを動きの伴う肺や肝臓の病変でも実現させる「体幹部定位放射線治療」を,1990年代後半より日本の施設が世界に先駆けて発展させてきた。この治療では動きのある腫瘍に対して正確に放射線を照射する技術が必須であり,技術開発に関しても日本が先導してきた。
北海道大学病院では,臓器の動きをリアルタイムに観察しながら照射できる世界初の高精度放射線治療システムである動体追跡放射線治療装置を開発し(文献1),動きのある腫瘍に対しても1mmの精度でピンポイントに放射線を照射することが可能となった。
臨床成績は,2003年の米国放射線腫瘍学会で早期肺癌に対する国内多施設の後ろ向き研究が報告され,健康状態不良のため手術不能または手術拒否症例では手術例に匹敵する治療成績であった(文献2)。その後,欧米での成績も相次いで報告され,体幹部定位放射線治療は,全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)ガイドラインにおいて,手術不能なⅠ期非小細胞肺癌に対する推奨治療とされている。
2004年4月に体幹部定位放射線治療は保険収載されたが,対象は肺腫瘍,肝腫瘍,脊髄動静脈奇形に限られており,欧米では積極的に行われている骨や副腎など,他領域への適用拡大が望まれる。

【文献】


1) Shirato H, et al:Lancet. 1999;353(9161):1331-2.
2) Onishi H, et al:Cancer. 2004;101(7):1623-31.

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