甲状腺未分化癌(ATC)はきわめて悪性度の高い疾患で,多くは不幸な転帰をとる。ATCの治療に関して,『甲状腺腫瘍診療ガイドライン』(文献1)によると,長期生存例では根治手術がなされたものが多く,さらに術後放射線外照射療法には再発予防効果があるとの報告が多い。一方,化学療法は有効性を示す薬剤の報告は少なく,以前はエトポシドとドキソルビシンの併用などが試みられてきた。2000年にAinら(文献2)はパクリタキセル(3週間ごと)で奏効率が53%という良好な成績を報告した。
日本でもATCの治療成績改善を目的とする多施設共同研究機構として甲状腺未分化癌研究コンソーシアム(ATCCJ)が09年1月に設立され,ATCCJの集積データをもとに,東山ら(文献3)はパクリタキセル(毎週投与)による,完全奏効例ならびに生存期間の延長を報告している。さらに,杉谷ら(文献4)はStage ⅣのATCに対する化学療法の積極的な投与を推奨している。また,米国甲状腺学会のガイドラインでも,ATCに対する抗癌化学療法のレジメンとして,パクリタキセル(毎週投与)が記載されている(文献5)。ATCCJは,12年5月から「甲状腺未分化癌に対するweekly paclitaxelによる化学療法の認容性,安全性に関する前向き研究」をスタートし,本療法の有用性の検証を行おうとしている。
1) 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会, 編:甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2010年版. 金原出版, 2010.
2) Ain KB, et al:Thyroid. 2000;10(7):587-94.
3) Higashiyama T, et al:Thyroid. 2010;20(1):7-14.
4) Sugitani I, et al:World J Surg. 2012;36(6): 1247-54.
5) Smallridge RC, et al:Thyroid. 2012;22(11): 1104-39.