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非機能性膵神経内分泌腫瘍の根治術におけるリンパ節郭清のあり方,古今東西

No.4735 (2015年01月24日発行) P.50

木村康利 (札幌医科大学消化器・総合,乳腺・内分泌外科 准教授)

登録日: 2015-01-24

最終更新日: 2016-10-26

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膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:pNET)に対する治療法の第一選択は外科的切除である。病態や腫瘍径,悪性度に応じた術式選択は,NCCNをはじめ北米(NANETS),欧州(ENETS),わが国(JNETS)(文献1)のガイドラインではおおむね一致している。しかし,腫瘍径が小さく悪性所見に乏しい場合,特に1~2cm大の非機能性pNETにおいては,リンパ節郭清の考え方に差がある。
胃・直腸NETの国際的な共通認識としては,局所切除(内視鏡的摘除を含む)の適応は,腫瘍径1cm未満あるいはリンパ節転移のリスク因子(固有筋層浸潤と脈管侵襲)がないことである。
一方,非機能性pNETでは,リンパ節転移リスクに関するコンセンサスがない。NCCN,NANETS,ENETSはともに,核出術を腫瘍径2cmまでに許容しているのに対し,最近,1cm大の非機能性pNETで10%前後にリンパ節転移を認めたとする観察研究があり(文献2),その取り扱いには厳に注意を要するとの警鐘がなされている。JNETS(文献1)では,腫瘍径1~2cmの場合は縮小手術であっても,同時に領域リンパ節のサンプリング・郭清を付加すべきとしている。
現状では,治癒の可能性が高いpNETこそ,リンパ節郭清による治癒・延命効果を考えるべきであろう。

【文献】


1) 膵・消化管神経内分泌腫瘍診療(NET)ガイドライン.
[http://jnets.umin.jp/pdf/guideline001s.pdf]
2) Hashim YM, et al:Ann Surg. 2014;259(2):197-203.

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