膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:pNET)に対する治療法の第一選択は外科的切除である。病態や腫瘍径,悪性度に応じた術式選択は,NCCNをはじめ北米(NANETS),欧州(ENETS),わが国(JNETS)(文献1)のガイドラインではおおむね一致している。しかし,腫瘍径が小さく悪性所見に乏しい場合,特に1~2cm大の非機能性pNETにおいては,リンパ節郭清の考え方に差がある。
胃・直腸NETの国際的な共通認識としては,局所切除(内視鏡的摘除を含む)の適応は,腫瘍径1cm未満あるいはリンパ節転移のリスク因子(固有筋層浸潤と脈管侵襲)がないことである。
一方,非機能性pNETでは,リンパ節転移リスクに関するコンセンサスがない。NCCN,NANETS,ENETSはともに,核出術を腫瘍径2cmまでに許容しているのに対し,最近,1cm大の非機能性pNETで10%前後にリンパ節転移を認めたとする観察研究があり(文献2),その取り扱いには厳に注意を要するとの警鐘がなされている。JNETS(文献1)では,腫瘍径1~2cmの場合は縮小手術であっても,同時に領域リンパ節のサンプリング・郭清を付加すべきとしている。
現状では,治癒の可能性が高いpNETこそ,リンパ節郭清による治癒・延命効果を考えるべきであろう。
1) 膵・消化管神経内分泌腫瘍診療(NET)ガイドライン.
[http://jnets.umin.jp/pdf/guideline001s.pdf]
2) Hashim YM, et al:Ann Surg. 2014;259(2):197-203.