先天性胆道拡張症は,肝内・肝外胆管,あるいは両方が拡張する病態で,その発生要因には膵・胆管合流異常が強く関わっている。膵・胆管合流異常は,解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常である。共通管が長く,十二指腸乳頭部括約筋作用が膵・胆管合流部に及ばないため,膵液が胆道内に逆流して胆汁と混じ,胆道を障害し拡張をきたすと考えられている。
腹痛,黄疸,腹部腫瘤が主な症状で,血液検査にて高ビリルビン血症,肝機能障害を認め,高アミラーゼ血症により膵炎と診断されることも少なくない。超音波検査で局在診断が行われ,ERCPやMRCPで膵・胆管合流異常を認めると診断が確定する。乳幼児では,開腹胆道造影で合流形態の確認が行われることが多い。放置すると肝・膵病態が進行し,また胆道癌のリスクが高まるため,発見されしだい手術が行われる。
手術は,拡張した肝外胆管の完全切除と,胆汁がスムーズに排泄される形での胆道再建からなる胆汁・膵液の分流手術が標準術式である。早期に適切な手術が行われれば予後は良好であるが,術後,膵炎,肝内結石症,胆道癌などを認める例があるため,長期のフォローアップが重要である。
本術式は開腹手術が一般的であるが,最近,腹腔鏡手術の報告が散見される(文献1)。また,膵・胆管合流異常症例の中には,胆管非拡張例が時に存在する。胆嚢癌を高率に合併するため成人では胆嚢摘出がよく行われるが,小児では分流手術が選択されることが多い。
1) 漆原直人, 他:小児外科. 2013;45(11):1173-9.