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肺癌におけるロボット支援手術

No.4739 (2015年02月21日発行) P.56

阪口全宏 (近畿大学呼吸器外科講師)

登録日: 2015-02-21

最終更新日: 2016-10-26

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呼吸器外科手術の低侵襲化の流れとして,胸腔鏡下手術(VATS)は気胸,縦隔腫瘍はもとより,早期の肺癌手術を中心に急速に普及してきている。さらに,内視鏡手術支援ロボットda Vinci(Intuitive Surgical, Inc.)のわが国の保有台数は米国についで世界第2位であり,呼吸器外科領域でも導入が検討されている。
da Vinciは術者が画像を見ながら手術操作を行うsurgeon console,患者の体に接続されるアームを有し,そこから体内に挿入された器具に術者の操作が伝えられるpatient cart,カメラの情報から3D画像を構成し,かつ助手用のモニターを載せたvision cartからなる。長所として鮮明な画像,高い自由度と大きな関節可動域を持つ鉗子操作,手ぶれ防止機能などがあり,狭い術野における繊細な操作性は,関節自由度が少なく直線的操作中心であるVATSよりもはるかに勝っている。また,手術時間は長くなるものの,出血量,疼痛,ドレーン留置期間,在院日数などはロボット支援手術が開胸術に勝るとの報告もある。
一方,術者の操作は触覚が欠如するため,視覚情報による補正の習熟が求められる。特に呼吸器領域では損傷しやすい肺動脈の取り扱いにいっそうの注意が求められる。もちろん,術者や助手が完全鏡視下手術に慣れていることも必要である。
現状では,拡大胸腺摘出術や比較的大きな縦隔腫瘍手術,肺癌のリンパ節郭清などでロボット支援手術の長所が出やすいと考えられている。保険適用がなくコストがかかることも問題であるが,近い将来,先進医療の適応が期待されている。

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