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原発性免疫不全症候群に対する造血幹細胞移植

No.4743 (2015年03月21日発行) P.56

井口晶裕 (北海道大学小児科教授)

有賀 正 (海道大学小児科教授)

登録日: 2015-03-21

最終更新日: 2016-10-26

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原発性免疫不全症候群(PID)の根治療法は造血幹細胞移植(SCT)で,公的バンクの発展とともに多くの患者でドナーが得られるようになった。初期PIDのSCTでは骨髄破壊的前処置(MAC)によるSCT実施が多く,そのため成長障害,不妊,二次がんなど晩期障害が合併していた。また,非血縁ドナー移植では移植片対宿主病合併のリスクの問題がある。2000年以降に骨髄非破壊的前処置(RIC)が普及し晩期障害の軽減が期待されているが,混合キメラや拒絶のリスクが未解決である。PIDの多くはSCTなしでは長期生存が期待できず,PIDに対するSCTには様々な課題が残っている。
筆者らはこれまでPID27例〔慢性肉芽腫症(CG D)9例,Wiskott-Aldrich症候群(WAS)7例,重症先天性好中球減少症(SCN)3例,X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)3例,CD40L欠損症2例,そのほか3例〕にSCTを行っている。移植ソースは骨髄16例(血縁/非血縁:5/11),臍帯血11例(すべて非血縁)で,前処置はMAC 13例,RIC 14例であった。拒絶は2例で,いずれもCGDでRICでの移植であった。混合キメラの6例はすべてCGDあるいはSCNであり,RICでの移植である。死亡例は成人期移植の2例で小児期移植は全例生存しており,小児期のSCTが良い成績であった。
PIDに対するSCTの課題として,疾患ごとの前処置の選定などが挙げられる(文献1)。特に,CGDに対する成績の改善,RICでの拒絶と混合キメラの対処方法,さらにはMACで移植してきた疾患群での前処置の軽減方法などが喫緊の問題である。

【文献】


1) Gungor T, et al:Lancet. 2014;383(9915):436-48.

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