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腹腔鏡下肝切除の普及と開腹肝切除

No.4748 (2015年04月25日発行) P.56

石崎陽一 (順天堂大学肝胆膵外科先任准教授)

川崎誠治 (順天堂大学肝胆膵外科教授)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-26

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腹腔鏡下肝切除は1992年にGagnerらが初めて報告して以来,体壁の大きな破壊を伴う開腹肝切除に対して低侵襲手術として普及しつつある。わが国でも日本内視鏡外科学会のアンケート調査によれば,2007年までは年間200例以下であったが,2011年1111例,2012年1398例,2013年1755例と,近年急速に増加している。
腫瘍径が小さく,腹腔鏡下でアプローチしやすい部位(S2,3,4,5,6)の肝腫瘍に対する腹腔鏡下肝切除は,開腹術に比べて出血量が少なく,手術時間,術後在院期間が短く,長期予後も開腹術と差がないとする報告が多い。最近は手術手技の向上のため,特定の施設では葉切除,区域切除のようなmajor hepatectomy,S1,7,8など腹腔鏡のアプローチが難しい部位の腫瘍,両葉多発例,肝門,主肝静脈や下大静脈に近接する腫瘍に対しても施行されるようになっている。
しかしながら,肝切除には開腹でも難易度の高い術式があり,最近のNational Clinical Database(NCD)によれば,外側区域を除く1区域以上の肝切除の手術死亡率は3.69%と,ほかの手術に比べ高い。したがって,執刀に際して,肝臓の解剖を熟知し,開腹肝切除の経験が豊富で,なおかつ内視鏡外科の優れた技量を持ち合わせた医師が施行しなくてはならない。
2014年,単一施設において腹腔鏡下肝切除に伴う高い死亡率が報道された。こうした難易度の高い肝切除に腹腔鏡下の手技が応用できるか否かに関しては,今後もさらなる検討が必要である。

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