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非典型溶血性尿毒症症候群

No.4753 (2015年05月30日発行) P.53

南学正臣 (東京大学腎臓・内分泌内科教授)

登録日: 2015-05-30

最終更新日: 2016-10-26

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非典型溶血性尿毒症症候群(atypical HUS)は,典型的でないHUS,つまり志賀毒素によるHUSおよびADAMTS13活性著減による血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)以外の血栓性微小血管症(TMA)を指す多彩な疾患を含む症候群である(文献1~3)。重要な原因として,補体制御異常によるatypical HUSがあり,一部の論文ではこの補体制御異常によるatypical HUSのみに対してatypical HUSという用語を狭義に使用している場合があるため,注意を要する。
補体制御異常によるatypical HUSは希少疾患であり,まず疑わないと診断ができない上に,ヒト化抗C5モノクローナル抗体による治療が著効するため,疾患の存在を認識して診断をつけることが重要である。補体制御異常の証拠を明確にするためには遺伝子解析検査と溶血試験などの蛋白解析が必要で,「非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の全国調査研究班」の事務局(ahus-office@umin.ac.jp)で症例登録と検査を行っている。なお,検査費用は1人当たり13万円程度かかるが,これを研究費でまかなって無料で行っているため,研究班で疑いが強いと判断した症例に対しては検査を引き受ける形になっている。
特に,ヒト化抗C5モノクローナル抗体の治療を長期的に継続する場合は,補体制御に関する遺伝子解析検査と,溶血試験などの蛋白解析の結果をふまえた上で,慎重に判断することが必須である。

【文献】


1) Sawai T, et al:Clin Exp Nephrol. 2014;18(1):4-9.
2) Sawai T, et al:Pediatr Int. 2014;56(1):1-5.
3) Fan X, et al:Mol Immunol. 2013;54(2):238-46.

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