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日本の肺癌外科治療の特徴

No.4761 (2015年07月25日発行) P.54

吉野一郎 (千葉大学呼吸器病態外科教授)

登録日: 2015-07-25

最終更新日: 2016-10-26

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日本胸部外科学会学術調査によると,わが国の原発性肺癌に対する手術数は3万5667例で(文献1),増加の一途である。肺癌登録合同委員会では5年ごとに全国から切除症例を集積して水準評価を行っている。1994年の調査では303施設から7408例,1999年は386施設から1万3344例,2004年は253施設から1万1663例が集積され,各病期・組織型の症例数と5年生存率,周術期合併症や手術関連死亡などが報告されている(文献2~4)。
この10年間で5年生存率は52%から70%に向上した。これは病理ⅠA期が35%から48%に増加,腺癌が56%から75%に増加していることから,末梢小型肺癌の増加が主因であることがわかる。連動して,標準である肺葉切除よりも切除量を減じた縮小手術(区域切除や楔状切除)が日常臨床で多く行われるようになってきた。高解像度CTにより類型化された小型肺癌に対する縮小手術の妥当性を検証する介入試験も,世界に先駆けて進行中である。このような日本の特異的な現象は,CTの普及が群を抜いて進んでいる医療インフラの賜物である(文献5)。
他方,局所進行期肺癌の切除割合は減少しているものの,予後は若干向上している。これもCTに加え,MRIやFDG-PETなどの遠隔転移を検索する機器の普及も進んでおり,本当に切除できる進行期肺癌が選別されてきていることを示唆する。

【文献】


1) Masuda M, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2014;62(12):734-64.
2) 白日高歩, 他:肺癌. 2002;42(6):555-66.
3) 下方 薫, 他:肺癌. 2007;47(4):298-311.
4) 澤端章好, 他:肺癌. 2010;50(7):875-88.
5) Anderson GF, et al:Health Aff (Millwood). 2005;24(4):903-14.

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