現在,神経内分泌腫瘍(NET)と呼ばれている疾患には,全身の臓器に発生する各種内分泌腫瘍のほか,従来カルチノイド(carcinomaとadenomaの中間的なふるまい)と不明瞭な概念で呼ばれているものが含まれていた。そこで2000年にWHOはこれらを合わせてNETという名称で取り扱うことを提唱した。さらに2010年にWHO病理組織学的分類が改訂され,臨床的性格と相関するよう,細胞分裂数やKi67標識率により,G1とG2,およびNEC(neuroendocrine carcinoma),MANEC(mixed adenoneuroendocrine carcinoma),hyperplastic and preneoplastic lesionsに分類された。また,NETの大部分を占める膵・消化管NETに対し,わが国では2013年に日本消化器外科学会から『膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン』が公開され,その診断と治療の均てん化が進みつつある(文献1)。
膵・消化管NETの治療は腫瘍量が少なければ原則手術だが,薬物療法として承認されていたのは消化管ホルモン産生腫瘍の症状を緩和させるオクトレオチドのみで,わが国にはこれまで抗腫瘍薬として適応が承認された薬剤はなかった。最近になり,2011年と2012年に膵NET治療薬として,分子標的治療薬エベロリムスとスニチニブにそれぞれ適応追加が承認された。また,2011年に消化管NET治療薬として,オクトレオチドLARの適応追加が承認された。これら薬剤の使用が可能になったことで,切除不能の膵・消化管NETの腫瘍制御の可能性にようやく道が開けた感がある。
1) 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン作成委員会, 編:膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン. 第1版. 2013.