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膵体尾部切除後の膵液瘻を防ぐ膵切離手技

No.4770 (2015年09月26日発行) P.56

石崎陽一 (順天堂大学肝胆膵外科先任准教授)

川崎誠治 (順天堂大学肝胆膵外科教授)

登録日: 2015-09-26

最終更新日: 2016-10-26

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膵体尾部切除後の切離断端の膵液瘻は,いまだに克服されていない重篤な合併症のひとつである。膵液瘻は腹腔内膿瘍,後出血の原因となり,入院期間の延長をきたし,稀に致命的となることもある。これまでは用手的に膵を離断し,主膵管を確認してこれを結紮切離し,膵実質は縫合する方法が一般的であった。離断方法も通常のメス,電気メス,超音波凝固切開装置,超音波吸引装置(CUSA)など,様々な器具を用いた方法が報告されてきたが,成績にあまり差がなかった。
最近はステイプラーを用いて膵を切離する施設が増加している。2列あるいは3列のステイプルで膵を圧挫し,内蔵されたカッターでステイプルの間を切離するタイプが多い。切離する膵臓の厚みに応じて適切なステイプルの高さを選択することができる。ステイプラーにポリグリコール酸フェルトを併用したもの,電動式ステイプラーなど様々な器具が開発されている。
最近の膵断端処理に関するメタアナリシスによれば,ステイプラー単独と縫合の比較,あるいはステイプラーに縫合を加えた方法と縫合の比較のいずれも,ステイプラーを用いたほうが膵液瘻の発生頻度は低かった(各々OR 0.77,CI;0.61~0.98,P=0.042,OR 0.70,CI;0.50~1.00,P=0.047)。ただし,ステイプラーを用いても膵液瘻の頻度がゼロになるわけではない。また,現在の膵切離に用いられているステイプラーは,元来は腸管縫合目的で開発された器具で,切除側膵断端にもステイプルがかかるので断端の迅速病理診断が提出しにくい。今後は残膵のみにステイプルがかかる膵切離専用の器具の開発が望まれる。

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