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内視鏡的ネクロセクトミーによる重症急性膵炎の最新治療

No.4771 (2015年10月03日発行) P.52

山本夏代 (東京大学消化器内科)

小池和彦 (東京大学消化器内科教授)

登録日: 2015-10-03

最終更新日: 2018-11-27

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重症急性膵炎では炎症に伴い膵周囲に液体や壊死物質が貯留する。これらのうち膵炎発症後4週間に形成された膵仮性嚢胞(pancreatic pseudocyst:PPC)と被包化壊死(walled-off necrosis:WON)(文献1)は,有症状の場合や感染を併発した場合に侵襲的治療が必要となる。
PPCの内容物は液体であり,多くはドレーン留置のみで改善する。近年の超音波内視鏡の発達により,胃や十二指腸などから嚢胞を穿刺しドレナージを行う「超音波内視鏡下瘻孔形成術」が主流になっている。一方,WONは壊死物質を含んでいるため,約60%の症例ではドレナージのみでは改善されず,壊死物質の強制的な除去が必要である。これらの症例では,過去には開腹による壊死物質除去(ネクロセクトミー)が行われていたが,死亡率が10~40%と侵襲性の高い治療であった。
2000年にはWONに直接内視鏡を挿入し壊死物質を除去するという,より低侵襲な「内視鏡的ネクロセクトミー」が紹介された。さらに2010年には,外科的治療を行うよりも低侵襲からの段階的治療が転帰を改善したという無作為化比較試験の結果が報告(文献2)されたことから,現在では内視鏡的ネクロセクトミーは外科治療に代わるWONの第一選択の治療として普及しつつある。一方,複数回の治療が必要であることや,出血,空気塞栓など致命的な偶発症の報告もある。
今後,手技や機器の発達により,さらなる治療効果や安全性の進歩が期待できる治療である。

【文献】


1) Banks PA, et al:Gut. 2013;62(1):102-11.
2) van Santvoort HC, et al:N Engl J Med. 2010;362(16):1491-502.

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