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難治性肺瘻の臨床

No.4775 (2015年10月31日発行) P.56

長門 芳 (千葉大学呼吸器外科)

吉野一郎 (千葉大学呼吸器病態外科教授)

登録日: 2015-10-31

最終更新日: 2016-10-26

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近年,難治性肺瘻を経験する機会が増えている。間質性肺炎,肺気腫,高齢者肺炎に続発する気胸や免疫抑制薬を投与された膠原病肺に続発する気胸の症例では,胸腔ドレナージのみでは治癒せず,難治性肺瘻となる場合が多い。また容易に膿胸へ移行したり,既に合併している例も多い。基礎疾患や合併症などにより耐術能が低く,全身麻酔下手術が困難なことも多く,呼吸器外科医は頭を抱えてしまう。
ドレナージにより肺拡張が得られた場合には,テトラサイクリン系抗菌薬あるいはOK-432,タルクなどの薬剤の胸腔内注入や,自己血の胸腔内注入による胸膜癒着術が行われてきた(OK-432とタルクは肺癌などの悪性疾患にのみ保険適用されている)。肺虚脱が続く場合には,胸腔造影下選択的fibrin glue閉鎖法(文献1)も時に有効である。
最近,気漏部位を支配する気管支を固形シリコンで閉塞するEWS(endobronchial Watanabe spigot)充塡術(文献2)が気胸の新しい治療法として注目されている。この方法で気漏を減少させて肺を膨脹させた後に胸膜癒着を試みるが,それでも無効な場合は手術を検討することになる。近年,硬膜外麻酔や鎮静薬あるいは局所麻酔のみで行う胸部手術の応用範囲が拡大されており,難治性肺瘻もその対象疾患である。
筆者らも難治性肺瘻はこれらの方法を駆使しているが,不成功の場合は在院死の転帰をとる場合もあり,課題のひとつとなっている。

【文献】


1) 栗原正利, 他:Jpn J Thorac Cardiovasc Surg. 2004;52(Suppl):253.
2) Kaneda H, et al:Respir Investig. 2015;53(1):30-6.

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