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Gd-EOB-DTPA造影MRIによる肝細胞癌の画像診断 【動脈相と肝細胞相の所見を組み合わせることで肝細胞性結節の診断能が向上】

No.4777 (2015年11月14日発行) P.53

神吉昭彦 (川崎医科大学放射線医学(画像診断1))

登録日: 2015-11-14

最終更新日: 2016-10-26

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Gd-EOB-DTPAは近年,臨床応用が可能となった肝細胞特異性造影剤である。造影剤の約50%が肝細胞膜に存在するトランスポーターを介して肝細胞内に取り込まれ,残りは従来の細胞外液性造影剤と同様に,血流評価を行った後に腎から排泄される。正常肝実質は,取り込まれたGd-EOB-DTPAにより造影剤投与後約20分で撮像される肝細胞相(T1強調画像)で高信号を示すが,トランスポーターを有しないタイプの肝細胞癌(HCC)などの結節性病変は,肝実質より相対的に低信号に描出される。Gd-EOB-DTPAは細胞外液性造影剤の性質もあり,動脈相では古典的HCCなどの病変は早期濃染像として高信号に描出される。
このように,動脈相と肝細胞相の所見を組み合わせることで,慢性肝疾患患者における多段階発がんを特徴とする肝細胞性結節の診断能は飛躍的に向上した。慢性肝疾患患者において,肝細胞相で相対的低信号かつ乏血性の結節は,前がん病変の高度異型結節または早期HCCと考えられるが,画像上,両者の明確な鑑別は困難とされている。臨床的には,それらを一括して多血化などの危険性のある結節として,Gd-EOB-DTPA造影MRI所見に基づいた経過観察および治療方針の決定を行うことが重要であると考えられる(文献1)。
一方,一部の多血性HCCは動脈相にて早期濃染を示し,肝細胞相でも周囲肝実質より高信号となるものがある。これは中分化型の多血性HCCに多く,がん細胞にトランスポーターの発現が増加していることが原因と報告されている。

【文献】


1) Higaki A, et al:Eur Radiol. 2014;24(10):2476-81.

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