高齢者気胸は,肺炎や肺気腫から続発することが多い。若年者と異なり気胸を発症すると呼吸不全に陥ることが多く,胸腔ドレナージを早急に行う必要がある。気漏が遷延し長期にドレーンが留置されると生活の質が低下し,場合によっては呼吸不全や膿胸を合併し,重篤となる。そのため高齢者気胸では,できる限り早急に気漏をコントロールし,日常生活に復帰させることが重要である。
手術を回避するため胸膜癒着療法を行うこともあるが,十分に肺が拡張していない場合には意図しない部位が癒着し,肺の膨脹をかえって妨げる結果となってしまうため,不用意に癒着療法を行うべきではない。
1990年代から導入された胸腔鏡手術は,小さな切開で気漏部位を修復でき高齢者でも侵襲が少なく,局所麻酔でも行える優れた方法であるが(文献1),気漏のコントロールに難渋してしまうことも多い。このため,気漏部位に吸収性の医療材料を補塡する場合もある。また,責任気管支が明らかであれば,手術を回避して気管支鏡を用いてシリコーン栓で塞栓してしまう場合もある(文献2)。
現在,最も問題となっているのが,肺線維症や感染症(アスペルギルスや抗酸菌など)に合併した気胸である。前者は線維化肺の一部の牽引拡張した気腔から,後者は感染による壊死巣から,気漏が遷延する。前述のような処置でも効果はなく,遷延性気漏から有瘻性膿胸へと悪化してしまうことが多い。
【肺線維症や感染症を合併している症例に注意】
1) Mukaida T, et al:Ann Thorac Surg. 1998;65(4):924-6.
2) Ueda Y, et al:J Bronchology Interv Pulmonol. 2015;22(3):278-80.