最近の分子生物学分野の発展により,腫瘍の増殖シグナルに関与する遺伝子を標的とした薬剤が次々に開発されている。甲状腺癌においても2014年6月,ソラフェニブが放射性ヨウ素(RAI)抵抗性の甲状腺分化癌に対し,わが国で初の承認を得た。翌15年5月にはレンバチニブが根治切除不能な甲状腺癌に対して新たに承認・発売された。後者は前者の適応に加え,未分化癌や進行再発髄様癌も適応に入る。さらに同年9月28日にはバンデタニブの根治切除不能な甲状腺髄様癌への使用が承認された。
3者の臨床試験の成績では,無増悪生存期間がプラセボに比し,いずれも有意に長期となっている。一方では手足症侯群,高血圧,QT間隔延長などの有害事象が高頻度に認められる。甲状腺癌の大半が分化癌のため,今まで抗癌剤が使用されておらず,これらの有害事象を持つ薬剤を安全に使用する目的で,日本内分泌外科学会,日本甲状腺外科学会は合同で甲状腺癌薬物療法委員会を設けた。その後,日本臨床腫瘍学会とともに「甲状腺癌診療連携プログラム」を作成した(文献1)。甲状腺の専門家とがん薬物療法の専門家のコラボレートである。現在は日本甲状腺学会,日本頭頸部外科学会も本プログラムに参加している。また,RAI抵抗性に関する定義も改めて重要となり,上記委員会と日本核医学会の共著で提示している(文献2)。
1) [http://www.jsmo.or.jp/thyroid-chemo/]
2) 伊藤研一, 他:日内分泌・甲状腺外会誌. 2014;31(4):310-3.