運航乗務員には,(1)航空身体検査基準〔以下,身検基準。No.4773(2015年10月17日)本欄54頁参照〕とともに,(2)医薬品の使用に関する指針(文献1)が定められている。(2)において医薬品を航空業務中の使用という視点で,A. 医師の確認が不要なもの,B. 航空身体検査指定医(以下,指定医)または航空会社の産業医により,地上での経過観察によりその効果と,副作用のないことが確認されれば使用しながら乗務が可能なもの,C. 国土交通大臣の許可が必要なもの,D. 使用が許可されないもの,の4群に分類している。
運航乗務員が急性疾患に罹患した際のある時間的断面において,指定医や産業医は,(1)と(2)に基づき乗務継続の可・不可に関する判断を求められる。その組み合わせには,a.身検基準を満たしかつ使用医薬品も乗務に差し支えない,b.身検基準を満たすが,使用医薬品は乗務に適さないまたはすぐにはその判断ができない,c.身検基準を満たさないが使用医薬品は差し支えない,d.身検基準を満たさずかつ使用医薬品も適さないまたはすぐにはその判断ができない,の4通りがある。ここで,乗務継続が可能なのはa.のみである。つまり仮に医薬品を使用できても,身体状況が適合・不適合を左右し,慎重な判断が要求される。運航乗務員には,医薬品の使用にあたっては必ず会社の産業医(医療部門)や,指定医に相談するよう説明している。
1) 国土交通省航空局:航空機乗組員の使用する医薬品の取扱いに関する指針.
[http://www.mlit.go.jp/common/001057922.pdf]