たこつぼ型心筋症は1990年に日本で初めて報告された。女性に多く,冠動脈に有意狭窄を認めないにもかかわらず,左室造影で心尖部が収縮せず,心基部が過剰収縮する。造影所見がたこつぼのようにみえることから,この名がついている。
最近,欧州・米国の共同研究において,たこつぼ型心筋症患者1750例と,年齢・性別をマッチさせた急性冠症候群患者との比較検討結果が報告(文献1)された。それによると,これまで誘因は精神的なストレスとされていたが,精神的ストレスよりも身体的ストレスのほうが高率であり,誘因を認めないケースもあることがわかった。また,たこつぼ型心筋症では,神経障害や精神障害の有病率が55.8%と,急性冠症候群の有病率25.7%と比べ,有意に高率であることが報告された。さらに,これまで長期予後は良好とされていたが,最長10年を超える長期予後では,総死亡のリスクが年間5.6%,心血管疾患の発症および死亡リスクも9.9%と高値である,とのことであった。
ゆえに,これまで本疾患は予後が良いとされてきたものの,実際には合併症発症率,死亡率ともに高いことから,本疾患の発作後には長年の経過観察を続ける必要がある。また今回の欧州・米国共同研究と従来の日本データとの差異には集団の男女比の違いや人種差などが影響している可能性もあり,今後も注意深い検討が必要と思われる。
1) Templin C, et al:N Engl J Med. 2015;373(10):929-38.