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腎不全透析症例の肺癌外科治療 【高炭酸ガス血症による急性アシドーシスに注意】

No.4797 (2016年04月02日発行) P.52

中野智之 (自治医科大学呼吸器外科)

遠藤俊輔 (自治医科大学呼吸器外科主任教授)

登録日: 2016-04-02

最終更新日: 2016-10-26

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日本透析医学会の報告では,血液透析例の5年生存率は約60%で,非透析例と比較して悪性腫瘍の罹患率が高く,死因の9.4%(第3位)を占める。維持透析中に行われる定期の胸部X線検査により発見される肺癌症例は,透析の予後が向上すればするほど,増加することが予想される。
透析合併肺癌に対する抗癌療法は投薬管理の点で容易ではなく,外科治療が根幹をなしているのが現状である。外科治療は術前後の透析スケジュール,輸液量・投薬量を立案した上で行う。術前には,術中・術後のNaや水分負荷に備えて多めに除水し,血清K値を4.0mEq/L以下,血清BUNを60mg/mL,血清Crを6mg/mL程度に補正する。出血が予想される手術では,術前透析中にHb値を10g/dL以上にする(文献1)。術後の透析には,出血を助長しにくいナファモスタットメシル酸塩を使用する。易感染性,創傷治癒遅延,易出血性などの透析に伴うリスクを考慮し,肺切除術は胸腔鏡を用いた侵襲の少ない方法で行うことを心がける。
術後に最も注意しなければならないことは,腎不全に伴う酸排泄障害と術後呼吸不全に伴う高炭酸ガス血症により,急性アシドーシスを生じやすいことである。人工呼吸管理と血液透析を準備し,酸塩基平衡を保てるよう管理する。
以上の点に注意すれば,透析症例でも非透析例と同等に安全に手術を行え,Ⅰ期肺癌であれば外科治療の恩恵は得られると考えられている(文献2)。

【文献】


1) Tsuchida M, et al:Ann Thorac Surg. 2001;71(2):435-8.
2) Takahama M, et al:Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2010;11(2):150-3.

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