従来,わが国の『膵癌診療ガイドライン』ではStage Ⅳまで外科的切除が推奨されてきた。一方,米国の診療ガイドライン(NCCN)(文献1)では主幹動脈,門脈などへの浸潤の程度によりresectable,borderline resectable(BR),unresectable(UR)を規定しており,BR症例では術前治療(化学療法,放射線化学療法)が推奨されている。最近,わが国においてもBR,UR膵癌に対して術前治療の検討がなされ,R0切除率が向上し治療成績が改善するとの報告が示されている(文献2)。
術前治療の効果としては,(1)抗腫瘍療法による腫瘍縮小,ダウンステージング,(2)潜在性の微小転移症例の除外,転移の制御,(3)手術前の局所制御によるR0切除率の向上,などが挙げられる。術前治療については放射線治療の有無,化学療法での使用薬剤など種々の報告があり,ランダム化比較試験を含めた今後の検討が必要である。
術前治療では抗腫瘍療法が施行されるため,histological evidenceを得る目的で超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)が施行されることが多い。また,膵頭部の症例で黄疸を伴う場合には適切なドレナージも必要となる。局所進行膵癌では,外科,放射線科と合同で,病変の進行度,切除の可否,ドレナージの方法を慎重に検討し,治療方針を決定する必要がある。
1) National Comprehensive Cancer Network:Practice Guideline in Oncology. Vol 2. 2015.
2) Kobayashi M, et al:Pancreas. 2014;43(3):350-60.