現在,わが国では30万人を超える患者が透析療法を受けている。その97%が血液透析で,残りの数%が腹膜透析を受けている。透析患者は年々増え続けており,その平均年齢は上昇の一途をたどっている。
血液透析のために,大半の患者は医療施設に通院し,1回4時間,週3回の治療を受ける。通院自体が困難な場合も多く,治療による時間的制約が仕事や家庭生活に及ぼす影響は少なくない。一方,腹膜透析は,腹腔内に挿入したカテーテルから透析液を注入・排出するため,自宅で施行可能であり,時間的制約は少ないと言える。しかし,カテーテルの感染や早期の腹膜機能低下などが生じやすく,その患者数は少数にとどまっている。
近年,血液透析を自宅で行う在宅血液透析療法が行われるようになった。患者の生活に合わせた時間帯に,患者自身にとって好ましい環境下で治療を行いうる。治療を短時間,連日行うことも可能で,1回の治療時間を延長して,より高い治療効果を得ることも可能である。この方法が,患者の全身状態の改善や生活上の制約の解消に有用であることが明らかにされている。
ただし,本法を実施するにあたっては,細やかな準備段階を経る必要がある。透析針の自己穿刺の習熟,介助者のトレーニング,透析装置の設置,電気・水道の増設などが必要となる。すべての血液透析患者に適応できるとは思われないが,本法を施行しうる患者にとっては,その恩恵はとても大きいと思われ,さらなる普及が望まれる。