超高齢社会の現在,加齢性難聴に対する補聴器の需要は高まるばかりであるが,販売店による技術レベルの差が大きかったり,補聴器が適合しているか否かを示す共通の指標がないなどの問題があった。
「補聴器適合検査の指針(2010)」:2010年に日本聴覚医学会から出された,補聴器調整に関するガイドラインである。補聴器が適合しているか否かを示す指標を8つ規定している。その中でも必須項目となるのは,(1)語音(ことば)の聞き取りの改善度,(2)環境音(雑音など)の許容度,の2つである。前者が悪ければ補聴器を装用する意味が薄れ,後者が悪ければうるさくて補聴器を装用し続けることができなくなる。常識的な指標ではあるものの,初めて明確に規定された意義は大きい。
「補聴器適合に関する診療情報提供書」「補聴器適合に関する報告書」:1980年代より,学会を中心として補聴器の適正な販売(適合不足の補聴器を乱売する弊害を抑える)のための体制づくりが進められてきた。その重要なもののひとつが公的な団体(テクノエイド協会)が認定する資格の創設であり,「認定補聴器技能者」資格として結実した。認定基準も漸次厳格化している。資格の条件として,日本耳鼻咽喉科学会認定の補聴器相談医との連携が必須とされている。さらに,2012年に職種間連携を目的とする専用の紹介状・返事のフォーム「補聴器適合に関する診療情報提供書」「補聴器適合に関する報告書」が出されたことにより,連携体制はより強固なものになりつつある。