悪性胆道狭窄例に対する超音波内視鏡下胆道ドレナージ術の適応について,私たちは,十二指腸スコープが主乳頭にまで達すれば経乳頭的胆道ドレナージ術を行い,また経乳頭的胆管挿管失敗例や十二指腸狭窄がある症例では経皮経肝的胆道ドレナージ術を行っています。これらの手技を用い,今まで当院の症例では胆道ドレナージ術を施行できています。最近,学会で超音波内視鏡下胆道ドレナージ術の報告を聞くようになり,どのような症例に施行すればよいか,東京大学・伊佐山浩通先生にご回答をお願いします。
【質問者】
五十嵐良典 東邦大学医療センター大森病院消化器内科 教授
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(endoscopic ultrasonography biliary drainage:EUS-BD)は新しい胆道ドレナージの方法であるため,適応はまだ確立はしていませんが,かなりコンセンサスが得られてきたところです。悪性胆道狭窄では確かに経乳頭的なドレナージが基本であり,困難例,不能例では経皮的な手技が選択されてきました。胆道ドレナージを必要とする切除不能悪性胆道狭窄の症例では,予後が不良な例が多く,残された生涯におけるQOLが重要です。そのため,チューブを体内に埋め込むことのできる胆道ドレナージ法が必要であり,手技自体もより低侵襲であることが求められてきました。このような考え方のもと,経皮的な手技から経乳頭的なドレナージへと変遷してきました。しかし,経乳頭的なドレナージにも限界があり,困難例,不能例に対してEUS-BDが開発されてきたのが背景です。このため,EUS-BDは内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)のいわゆるsalvageという位置づけで施行されてきたと思われます。
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