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胸腺腫に対する術式の変遷 【開胸から胸腔鏡へと徐々にシフトし,胸腺組織の全摘が必要との定説も検証されている】

No.4817 (2016年08月20日発行) P.55

中田昌男 (川崎医科大学呼吸器外科教授)

登録日: 2016-08-20

最終更新日: 2016-10-30

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胸腺腫は,縦隔腫瘍の中では最も頻度の高い疾患であり,自己免疫疾患を高頻度に合併することから,以前より多くの研究がなされてきた。その治療は,可能な限り外科的切除が第一選択であることに変わりはない。しかし,アプローチ法も含めた手術術式は時代とともに変遷し,また,そのデータも集積されつつある。
胸腺腫の手術術式は,胸腺腫を含めた胸腺摘出術が基本であり,重症筋無力症を伴う場合は,さらに周囲脂肪織を含めた拡大胸腺摘出術が行われる。従来,本術式は胸骨正中切開下に行われてきたが,胸腔鏡手術の出現とともに内視鏡下に施行されることが増え,今では早期例に対しては胸腔鏡下(あるいはロボット支援下)に行われることが一般的となった。長期予後は,開胸と胸腔鏡で差がないとの報告(文献1)も出されている。
一方,胸腔鏡手術の普及と相前後して,胸腺組織の全摘出の必要性についても議論されることとなった。日本胸腺研究会による,全国32施設から症例を集積した後ろ向き研究では,1991~2010年にわが国で切除された,重症筋無力症を合併しない正岡Ⅰ期ないしⅡ期の胸腺腫1394例で,胸腺腫胸腺摘出術を施行した群と胸腺腫のみ摘出した群では,予後に差は認めなかった(文献2)。胸腺腫は胸腺組織の一方に偏在することが多いため,胸腺腫のみの摘出で根治が得られるのであれば,胸腔鏡手術はさらに応用が進むであろう。

【文献】


1) Wang H, et al:J Thorac Dis. 2016;8(4):673-9.
2) Nakagawa K, et al:Ann Thorac Surg. 2016;101(2):520-6.

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