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膵仮性嚢胞に対する治療方針 【治療対象は,感染の合併,通過障害や胆汁うっ滞に伴う症状がみられる場合】

No.4818 (2016年08月27日発行) P.54

安田一朗 (帝京大学医学部附属溝口病院消化器内科教授)

良沢昭銘 (埼玉医科大学国際医療センター消化器内科教授)

登録日: 2016-08-27

最終更新日: 2016-11-04

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従来,膵仮性嚢胞は6週間の経過観察で6cm以下にならなければ治療適応とされていましたが,最近の状況は? 病名・病態の新しい定義と治療適応,方法について,帝京大学医学部附属溝口病院・安田一朗先生にお願いします。

【質問者】

良沢昭銘 埼玉医科大学国際医療センター消化器内科教授


【回答】

2012年に改訂されたAtlanta分類により,急性膵炎に伴う膵周囲液体貯留の最終形態は,壊死性膵炎後に形成されて内部に壊死組織を含む“walled-off necrosis(WON)”と,間質性浮腫性膵炎後に形成されて壊死組織を含まない「仮性嚢胞」に分類・定義されました。

これによって急性膵炎後の液体貯留の分類はすっきりしましたが,一方で「仮性嚢胞」という用語をここで使用したため,より一般的な慢性膵炎の経過中に形成される「仮性嚢胞」との混乱が生じています。急性膵炎(間質性浮腫性膵炎)に伴ってできる「仮性嚢胞」の本態は炎症性滲出液の貯留と考えられますが,慢性膵炎の「仮性嚢胞」は主膵管あるいは分枝膵管の破綻によって形成されるもので,両者は成因・病態が異なり,当然,治療方針も異なります。前者は保存的治療での自然消褪がより期待できますが,後者は自然消褪があまり期待できません。かといって,すべての慢性膵炎に伴う「仮性嚢胞」が治療の対象になるわけではなく,治療対象となるのは,あくまでも有症状例であり,感染の合併,消化管や胆管の圧排による通過障害や胆汁うっ滞に伴う症状がみられる場合です。

こうした場合も,まずは抗菌薬投与や絶食により数日経過をみて,改善がない場合にドレナージの適応と判断します。つまり,必ずしも経過観察期間や嚢胞の大きさで治療の適応を判断するわけではなく,症状の程度(重症度)や保存的治療に対する反応をみて判断します。

ドレナージの方法は,内視鏡的,経皮的,あるいは外科手術によるアプローチが考えられますが,最近では超音波内視鏡下に安全・確実な嚢胞穿刺が可能となり,ダイレーターや拡張バルーンの改良により穿刺部位の拡張も容易となったことから,内視鏡的ドレナージを第一選択とする施設が増えています。内視鏡的ドレナージの利点には,外科手術よりもはるかに低侵襲で,経皮的ドレナージのようにチューブ留置に伴う苦痛がないことが挙げられます。また,短期間のうちに嚢胞が増大傾向を呈する場合も破裂の危険性があることから治療対象と考えられますが,嚢胞内容のCT値が高い場合には嚢胞内出血の可能性を疑い,造影CTを行います。嚢胞壁に仮性動脈瘤を認める場合や嚢胞内出血の可能性が高い場合には,経カテーテル的に脾動脈を塞栓してから内視鏡的ドレナージを行わないと,ドレナージによる嚢胞内圧の急激な低下に伴い仮性動脈瘤が破裂して大出血をきたす危険性があります。

【回答者】

安田一朗 帝京大学医学部附属溝口病院消化器内科教授

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