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米国での小児科レジデントを修了して [エッセイ]

No.4803 (2016年05月14日発行) P.68

桑原功光 (The University of Tennessee Pediatric Neurology Fellow)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-24

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  • このたび、2012年7月~15年6月の3年かけて、ハワイ大学小児科レジデントプログラムを修了し、日米両国で小児科専門医となった。ここに、私が経験した米国小児科レジデントプログラムについて報告する。

    ハワイでの研修

    ハワイ大学小児科レジデントプログラムの主なトレーニング病院は、オアフ島にあるKapi’olani Medical Center for Women and Children(カピオラニ医療センター)である。ワイキキから車で10分ほどに位置し、病床数226床、年間分娩数8000件、NICU入院数1000件、年間入院数が4000件を超える、太平洋区域で唯一の母子医療センターである。ハワイ全域に加えて、サモア、トンガなどポリネシアから、マーシャル諸島、マイクロネシア諸島に及ぶ広範囲の地域をカバーする。日本の米軍基地、フィリピンからの患者など、世界中からの観光客も来院する。

    ハワイは移民が多く、米国本土とは人種割合が大きく異なる。白人系24.7%、フィリピン系14.5%に次いで、日系が13.6%(2010年国勢調査)である。混血も珍しくなく、小児科の問診で人種を聞くと、5~6以上の人種を答える家族も珍しくない。また、ハワイには日本人観光客も多いため、日本人の患者を担当することもよくあった。実は、ハワイでは日本語を話す小児科医がほとんどいないため、日本語を話すことができる日本人レジデントは重宝される。

    ハワイの小児科レジデントプログラムは、1年間を4週間ずつの計13ブロックにわけて、主にinpatient(病棟を中心としたブロック)とoutpatient(外来を中心としたブロック)をローテートする。

    ハワイでは特に病棟が忙しい。病棟は、一般小児および血液腫瘍科を含めて計56床。日本よりも入院への敷居が高いため、日本に比べて重症例や基礎疾患が複雑な患児ばかりである。指導医と卒後2~3年目のレジデント1人、インターン1~2人、そして医学生からなるチームで、最高16人の患者を担当する。

    朝5時に夜勤帯より申し送りを受け、回診開始。7時30分より朝の症例検討会に参加。8時30分より指導医とともに回診が始まる。早朝の短い間にチームすべての患者を把握しなければならず、病棟チームは多忙である。特にレジデント3年目は医学知識のみならず、チームリーダーとしての管理能力も要求される。回診が終わった後は病棟指示、カルテ記載、他科への連絡を行いつつ、平均5~10人の新規入院を受け入れる。夕方5時に夜勤レジデントに申し送りをして、帰宅となる。多忙な業務に優先順位を決めて、冷静に仕事を処理する能力が問われる。

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