中学2年生のとき、弟の納骨を済ませた帰途、父から「医師にならんか」と言われて、飛び上がるほど驚いた。もちろん学業成績は振るわず、まったくなれるとは思えなかったので、黙っていた。
その後、高校3年生となり、大学への出願時期となった。父の意向もあり、医学部進学課程に提出した。落第の可能性は大きかったが、受験するだけはしてみようと決心した。すると、幸運にも医学部に合格した。入学後、この学部は本学でも最難関であることを知り、このままここに居ようと決意した。私の強力な意思で決めるのではなく、外部の条件で決められる、まったく主体性のない自分自身の姿であった。
大学卒業後、医師となり、勤務医を続けていた。専門領域において深く研究する能力はなく、広く浅く学ぶこととなり、まさに父の望む開業に適した道であった。
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