医療現場では多職種によるチームプレーが治療の成否に大いに影響する。幅広い多職種連携を醸成するには日頃のコミュニケーションが大切であると考え、本学では多職種メンバーによるクラブ活動を推奨し、それぞれに援助金(年10万円)を支給している。
現在、社交ダンス、ヨガ、食べ歩きなど100以上のクラブが活動している。私もSwing Lab. というスウィングジャズを演奏するグループに入っている。薬剤部長がベースギター、薬剤師がドラム、歯科衛生士がフルート、図書館司書がキーボード、看護師がボーカル、そして私がクラリネットを担当している。私が最も下手なのだが、ここで連携のありがたさが発揮される。たとえ私のクラリネットがリズムや音を外しても、仲間がすかさず助け舟を出してくれるのである。そして下手は下手なりに演奏し終わり、お互いの顔を見合わせ、うなずき合うとき、一体感がわき上がってくる。月に1回くらいの練習であったが、何とか8曲ほどのレパートリーを持つようになった。
そんなある日、ビックリするお話がきた。なんと、学生が主催する大学祭のステージへの出演依頼がきたのである。学生による素晴らしいロックバンド演奏やアカペラの歌声に挟まれるように、オジ・オバ初心者グループを出演させる企画委員の目論見にはいささか疑念を抱きながらも、ありがたくお受けした。
当日、いざステージに上がると私が授業を担当している学生達、教育職員、病院職員、そして行きつけのラーメン屋のおかみさんまで集まってくれていることに気づき、緊張度は一気に高まった。
最後の演奏曲は我々が大好きな“On The Sunny Side of the Street”である。「さあ、心配事はドア下に置き、コートと帽子をもって、陽の当たる道に出ようよ。パタパタという足音も幸せな響きで、舞い上がる埃も金のよう、1セントもなくたって心の豊かさはロックフェラーさ」という、大変に前向きな歌詞である。この曲は皆を元気づけ、ウキウキさせる。そして、最後の1音を皆で同時に出せたとき、気持ちが1つになったと実感される。最後の小節から3拍おいて、全員でジャーン。「やったー」。