沖縄の観光案内を見ると、しばしば「神の島」であると宣伝されている。この神の島といわれる所以は何であろうか。この答えのヒントは、正真正銘の「神の島」と呼ばれる久高島(沖縄本島南部の安座間港から船で20分ほど南下)にある。
神の島と称される本質は何であろうか。それは女神の存在であると考えられる。琉球王国は交易の島であった。海洋王国にとって、最も重要なのは台風の予測であったろう。日本本島においても、卑弥呼の存在に象徴されるように、特殊なパワーを持った女性は存在していたと考えられる。しかしながら、いつの時代からか、その存在は消滅している。一方で、久高島には、台風の到来までも予見できる特殊予知能力を有する女性がいたと推測され、その血筋は受け継がれてきた。現在でも久高島には、ノロ(神女)という女神の家系が存在しており、卑弥呼の文化がそのまま生き続けている。また、久高島の中にクボー御嶽という聖地があるが、そこは永年にわたって「男子禁制」となっている。
首里王朝時代には、海を渡るというリスクを避ける必要もあり、王様は久高島を訪れることが困難であった。久高島の対面にある世界遺産、斎場御嶽は「自然の首里城」という機能を有しており、王様はここから久高島に祈りを捧げたと考えられる。今では、斎場御嶽が世界遺産になったことから観光客が増えすぎて、その本質が失われつつある。久高島を管理している南城市は、斎場御嶽が荒らされることに危機感を抱き、「男子禁制」にすることを検討中(琉球新報、2013年9月1日、一面)であるという。
さて、私の勤務している琉球大学医学部には、50m四方ほどの中庭がある。この中庭は巨大な女体を模して設計されている(沖縄医報. 2013;49:968-70)。
ちまたでは男女共同参画とか、女性の働きやすい職場環境をつくろうとか、「男子社会」の視点で物事が進んでいる。一方、神の島である久高島には「男子禁制」の聖地があり、世界遺産の斎場御嶽は市役所が「男子禁制」を検討し、なおかつ学問の府である琉球大学医学部の中庭が女体になっている。すなわち女性が男性より高く位置づけられている点が、「神の島」沖縄の本質ではないかと感じている。