昨年の本欄に引き続き、剣道絡みの話を書きたいと思う。昨年5月3日に第112回全日本剣道演武大会に出場した。この大会は120年に及ぶ伝統ある演武大会で、2~5日の4日間、京都市武道センター内「旧武徳殿」で行われ、国内外から約3800人の高段者が参加して、日頃の稽古の成果を披露する会である。出場できるのは錬士6段以上に限られているが、海外から駆け付ける武道愛好者も珍しくない。会場の旧武徳殿は、1899(明治32)年に建てられた国の重要文化財である。1人当たりの演武時間は数分間だが、それでも「武道の聖地」に足を踏み入れた緊張感で試合をした。
私自身は、剣道は中学から始め医大在学中に4段を頂いたものの、卒業後の26~7年間は年に1、2回稽古をする程度であった。8~9年前に府庁剣道部に入部させて頂き再開した。学生時代には、まさか自分がこの大会に出られるなんてことは考えもしなかったが、平成26年8月に錬士6段に昇段し出場資格を得た。試合は思うようにはいかず引き分けたが、緊張感があり、また満足感も得られた。一本当たれば良いというのではなく、お相手にまず気で勝って、しかる後に打つように1年間修行したいと思っている。
話は変わるが、「剣道指導の心構え」は3つの要点で構成されている。1つ目は「竹刀の本意」と呼ばれるもので、竹刀は剣であり、相手に向けると同時に自分に向けられた剣でもあることを理解しなければならない。2つ目は「礼法」を重んずる指導を心掛ける必要性を説いたもので、心豊かな人間の育成、そして「交剣知愛」の輪を広げていくことを要点としている。3つ目は「生涯剣道」の実践により、生涯にわたる人間形成の道を見出すように指導することを説いたものである。
卒業後、長らく稽古はできていなかったが、遅ればせながら、「生涯剣道」の道を歩んでいる。大学剣道部部長を務めており、部員には機会あるごとに礼法はもちろん、生涯剣道の意義を教えるように務めている。現在、伊藤雄三郎範士に「礼法」「竹刀の本意」「生涯剣道」の3つの要点を日々の稽古を通じてご指導賜り、自分でも次の世代に引き続く責任があると感じている。