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(3)1型(IgG4関連)自己免疫性膵炎の治療と鑑別 [特集:IgG4関連疾患のこれからの展開]

No.4694 (2014年04月12日発行) P.28

岡崎和一 (関西医科大学内科学第三講座教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-07

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  • 自己免疫性膵炎(AIP)とIgG4関連疾患はわが国より発信された新規疾患である

    AIPはしばしば閉塞性黄疸で発症し,時に膵腫瘤を形成する特有の膵炎であり,リンパ球と形質細胞の高度な浸潤と線維化を組織学的特徴とする

    ステロイドに劇的に反応する

    わが国では国際診断基準と1型を対象とした「自己免疫性膵炎臨床診断基準2011」が使用できる

    「自己免疫性膵炎診療ガイドライン2013」が公表された

    1. 疾患概念確立への流れ

    自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis;AIP)とIgG4関連疾患(IgG4-related disease;IgG4-RD)はわが国より発信された新規疾患と言える。1961年のSarlesら1)の高γグロブリン血症を伴う膵炎例が,自己免疫の関与が推察される膵炎の最初の報告であるが,AIPとしては1995年にYoshidaら2)により提唱された。その後,2001年のHamanoら3)による高IgG4血症の報告を機にIgG4をキーワードとする新たな展開を見るに至っている。
    わが国のAIPのほとんどは,病理組織学的にリンパ球とIgG4陽性形質細胞浸潤,閉塞性静脈炎と花筵様線維化(storiform fibrosis)を特徴とする膵炎(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis;LPSP)4)である。一方,画像所見とステロイド反応性が類似するもののIgG4の関連しない好中球上皮病変(granulocytic epithelial lesion;GEL)を伴うidiopathic duct-centric chronic pancreatitis(IDCP)5)6)もAIPとして,主として欧米から報告されたことから,疾患概念を含めた異同について議論されてきた7)。AIPの病因・病態の解明と治療の確立のために,2010年に開催された国際膵臓学会にて両疾患は異なる病態であることを確認するとともに,前者を1型,後者を2型と定義し,それぞれの疾患概念と国際診断基準〔International Consensus Diagnostic Criteria(ICDC)for AIP〕のコンセンサスが初めて得られた8)9)。ICDCの提唱を受け,わが国の実情に沿った「自己免疫性膵炎臨床診断基準2011」(改訂診断基準2011)10)が提唱されている。
    一方,後述するような経緯を経て,「IgG4陽性形質細胞浸潤,線維化,閉塞性静脈炎などを全身臓器に認める特異な疾患群」というIgG4関連疾患の概念の確立後は,1型AIPはIgG4関連疾患の膵病変と位置づけられており,従来の原因不明の慢性疾患の多くがIgG4をキーワードに再分類されつつある11)~13)。たとえば,AIPにときどき合併する涙腺・唾液腺病変は,IgG4が注目される以前にはSjögren症候群(SjS)と考えられていた。しかしながら,歴史的には単なるSjS亜型とされていたMikulicz病14)が病理組織学的所見から,IgG4関連Mikulicz病として再認識されるに至った13)。また,硬化性胆管病変も原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis;PSC)と考えられていたが,ステロイドに反応することや病理組織学的所見よりPSCとは異なる病態であることが明らかとなり,IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-related sclerosing cholangitis;IgG4-SC)として区別されるに至った4)。それ以外にも後腹膜腔(後腹膜線維症),腎,甲状腺,呼吸器,中枢神経系,動脈などにもきわめて類似する病変が報告されている11)~13)
    歴史的に,一見関連のなさそうな各臓器病変を一連の全身性疾患として最初に提唱したのは,1967年のComingsら15)の多巣性線維硬化性疾患(familial multifocal fibrosclerosis)の概念であるが,高IgG4血症と著しいIgG4陽性形質細胞浸潤という特徴が明らかになるにつれ,IgG4で包括される全身性疾患として位置づけられるようになった11)~13)
    一連の研究の過程で,AIPの研究からはKamisawaらにより“IgG4-related autoimmune disease” 16)“IgG4-related sclerosing disease”17)の概念が提唱された。その後,Mikulicz病の研究から,2006年,Yamamotoら18)により“systemic IgG4-related plasmacytic syndrome”(SIPS),2008年,Masakiら19)により“IgG4-positive multiorgan lymphoproliferative syndrome”(MOLPS)としてリンパ増殖症としての概念も提唱された。
    2009年に厚生労働省難治性疾患克服研究事業として,全身性の線維硬化性疾患の立場から「IgG4関連全身硬化性疾患の診断法の確立と治療方法の開発に関する研究」班(研究代表者:岡崎和一)が,リンパ増殖症の立場から「新規疾患,IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患(IgG4+MOLPS)の確立のための研究」班(研究代表者:梅原久範)が組織された。2010年には統一病名を「IgG4関連疾患」(IgG4-related disease)とし,2011年には世界に先駆けて両班によるIgG4関連疾患の包括診断基準が提唱された20)。2011年10月にボストンで開催された国際シンポジウム(International Symposium on IgG4-RD)では,各臓器病変に対する疾患名称11)と病理所見21)のコンセンサスが得られた。

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