昨年5月27日、児童福祉法の総則が69年ぶりに改正されました。いえいえ、児童福祉法が69年間も改正されなかったというわけではありません。それどころか、2~3年ごとに改正が繰り返され、まるでパッチワークのようになっています。そのため、第21条の5の31などという条文まであったりします。私はこの歴史ある法律の抜本改正に、「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」の委員として関わらせて頂きました。
では、どんな改正だったかと申しますと、総則のうち、第1条に「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」という文言が盛り込まれ、第2条には児童の「最善の利益が優先して考慮され」と、私がここ数年間ずっと主張し続けてきたChild First Doctrine(子どもが第一優先の原則)が明記されたのです。とても喜ばしいことです。
しかしながら、これで安心してはいられません。なぜならば、子どもの健康・福祉に関わる専門職にこの理念が浸透していないからです。たとえば、「虐待を受けた子どもと虐待をした保護者の人権は、どちらも対等に守らなければいけない」などと、真顔でのたまう児童福祉司が、いまだにいたりするわけです。
子ども虐待・ネグレクト防止の活動をしていると、児童相談所の児童福祉司や児童心理司、所長さんたちばかりでなく、警察官や検察官から意見聴取を受けることも増え、鑑定人や専門家として法廷で証言する機会も増えました。それでだんだんわかってきたのですが、固い組織ほど保守的で、裁判所を変えるのは至難の業です。
実は、昨年秋まで「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」の構成員を務めていたのですが、これがなかなか大変な会議でして、実務家と法律家が真っ向対立、正面衝突状態でバトルが繰り広げられました。
みなさんがこの「炉辺閑話」を読んでくださっている頃には、家庭裁判所による子ども虐待事件の審判体制が変わるか、変わらないか、この検討会の成果が判明していると思われます。さてさて、私はどんな新年を迎えていることでしょう。