この十数年にわたってあちこちで「2・3・4、8・7・6の法則」と称し、民間病院が日本の病院数約8500病院の8割、病床数約160万床の7割、救急搬送年間約540万件の6割を受け入れており、その多くが医療法人立であることを含め、民間病院が日本の医療における役割として公的病院より勝ることの重要性を示してきた。また、診療所においてもほとんどが民間であることも事実である。
まさしく、日本の医療は民間医療機関が支えていると言ってもおかしくない。ただし、このことはよく言われるグローバルな見地で見るとアブノーマルな話で、世界の医療は公的医療機関またはそのシステムによって支えられているところが多く、世界から見れば逆に民間中心などというのはありえないと言われてしまうのである。
終戦後、日本ではすぐに病院を中心とする医療施設再構築にあたり、昭和25年に医療法人制度が創設された。株式会社との違いとして、剰余金の株主への配当を禁じたことが非常に大きく作用し、剰余金は次の医療への投資に繋がり、結果として民間医療機関の発展に寄与することになった。株式会社は収益を上げ、株主への配当を本質としているわけであるが、医療法人はまったく気にせずに医療へ専念できることが一番大きな違いとなったわけである。もちろん民間であるから、民間同士で競争原理が働き、互いに切磋琢磨し、更に経営効率を上げる結果ともなった。
現在、団塊の世代が後期高齢者に到達する2025年の超高齢社会に備え、地域医療構想や、それを具現化する地域包括ケアシステムなどがまさしく構築されようとしている。やはりこの中における中心的役割は民間医療機関であるし、このことは当事者としてしっかりと受け入れていかなければならない。
ただ、医療従事者の需給に関する検討会における「医師の需給推計の結果について」では、2030年が医師需要のピークという推計がなされている。医師需要は医療需要とも考えられるので、その辺りが医療需要のピークとも考えられる。その後は医療機関にとり、整理整頓の時代に入るかもしれないが、地域差はあるものの需要が急増するピーク前15年近くは、地域医療を守るために民間医療機関の全力での対応が必要となることを考えておかなければならない。