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病院のグローバル化とは? [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.17

大西 真 (国立国際医療研究センター病院病院長)

登録日: 2017-01-01

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私が勤務しております病院の英語表記は「National Center for Global Health and Medicine」となっており、病院のグローバル化とはどういう意味なのか日々考えております。病院のある新宿区は居住者に占める外国人の割合は約12%と都内で突出しており、中国人、韓国人、ミャンマー人、ネパール人、ベトナム人、モンゴル人などの方々がよく受診され、外来や入院患者さんの外国人比率は約5~6%となっております。

外国人の方々を円滑に受け入れるために、2015年4月に国際診療部を設置致しましたが、受け入れ窓口が一本化され、外国人の紹介患者さんも増加し、JMIPなどの国際認証も取得することができました。現場では英語および中国語が必要となる場面が大半を占めており、特に中国語対応が切実な課題となっています。電話通訳や対面通訳を導入していますが、最近では多言語自動音声翻訳機の進歩も著しく、実用化も目前となっています。

2016年5月には、新しい人間ドックセンターを開設しましたが、中国の方をはじめとして外国人の方からの問い合わせも急増しており、日本の人間ドックに対する信頼の厚さを感じます。イスラム教の患者さんがお祈りする場所の設置、ハラル食の提供、イスラム教の女性患者さんへの女性医師による対応など、宗教にも配慮しております。

世界のグローバル化の促進に伴い、様々な国際感染症への対応が大きな課題となっています。まさにグローバル化が感染リスクを拡大させている状況です。当センターでもエボラ出血熱やMERS疑いの患者さん、日本初のジカ熱や国内で多数発症したデング熱の患者さんも診察しました。今後もますます国際感染症への対応が重要になってきます。

当院ではトラベルクリニックを開設していますが、アフリカや中南米の特定の国に渡航する際に接種が必要な黄熱ワクチン対応も求められております。今後は来る2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、外国人患者さんや国際感染症危機管理などへの適切な対応も一層求められてくるものと思われます。

「グローバル化」という言葉の定義は曖昧ですが、病院として果たすべきグローバル化はこのようなことではないかと試行錯誤しております。

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