軽度の腎機能低下や蛋白尿〔慢性腎臓病(CKD)〕が心筋梗塞や脳卒中の重大な危険因子であることが欧米のみならず,わが国でも既に明らかにされている。CKD患者では,CKDステージが高くなるに従って冠動脈の狭窄病変が高度となり,また冠動脈組織の粥状硬化病変の程度が高くなることも明らかになっている。さらに,微量アルブミン尿以上のアルブミン尿は,GFRの低下とは独立した脳心血管病の危険因子であることが示されている。脳・心・腎の障害が連関するメカニズムについて,高血圧などによる糸球体障害は皮質深部にある傍髄質糸球体から始まり,微量アルブミン尿の時期には既にこの糸球体障害は存在しており,これは,その輸入細動脈に高い圧力が加わるため発生すると考えられる。同様の循環動態の異常は脳の穿通枝などにも認められており,このことにより,実は微量アルブミン尿は細動脈の障害を反映しているとの説明が有力視されているが,交感神経系やレニン─アンジオテンシン系などの体液因子の関与を示唆するエビデンスもある。
今回,この「脳─心─腎連関」を改めて整理する意味から,脳・心・腎の3人のエキスパートの先生方にそれぞれの立場から論説頂いた。
1 脳から見た「脳─心─腎連関」
九州大学循環器病未来医療研究センター未来心血管治療学共同研究部門准教授 岸 拓弥
2 腎臓から見た「脳─心─腎連関」
香川大学医学部形態・機能医学講座薬理学 山﨑大輔
香川大学医学部形態・機能医学講座薬理学教授 西山 成
3 心臓から見た「脳─心─腎連関」
川崎医科大学総合医療センター内科(循環器)部長 堀尾武史