心不全と腎不全は互いに影響を及ぼし合うが,これには貧血も関与し,心腎貧血症候群と呼ばれる
心臓と腎臓の障害が連関する病態を心腎症候群(CRS)と呼び,これには5つのtypeがある
脳─心─腎連関を考える上で心房細動も1つの視点として重要である
心臓と腎臓という2つの臓器は,一方が障害を受けると他方の機能も悪化するといった相互依存関係が強いことは古くから知られており,日常臨床でもしばしば経験する事象である。2002年,Silverbergら1)は,うっ血性心不全と慢性腎不全は,ともに貧血を引き起こし,また,貧血が心不全や腎不全を悪化させ,それらの悪化が貧血をさらに進行させるといったサイクルがあることを示し,これを心腎貧血症候群(cardio renal anemia syndrome)と名づけた。慢性心不全における貧血の原因としては慢性炎症が考えられる。一方,慢性腎障害における貧血の進行は,腎でのエリスロポエチンの産生低下によるものと考えられている。
心─腎連関は,以上のような貧血が関与する,あるいは慢性の経過で進行するといった病態ばかりでなく,一方の急性の障害が他方に影響を与えるもの,全身性の疾患が心,腎の両臓器に障害を与えるものなど様々な病態が考えられる。このような複雑な種々の病態を整理するため,2008年,Roncoら2)は,心腎症候群(cardio-renal syndrome:CRS)として5つに分類したものを提唱し,2010年,急性透析品質イニシアチブ(acute dialysis quality initiative:ADQI)は,CRSの5分類に基づいた疫学,診断,予防,治療戦略について議論した結果を公表した3)。5分類の名称と原疾患(要因),続発疾患(結果)を表1に示す。type 1は急性心疾患による急性腎障害(acute kidney injury:AKI),type 2は慢性心疾患による慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD),type 3はAKIに伴う急性心疾患,type 4はCKDに併発する慢性・急性の心疾患,type 5は全身性疾患により同時進行的に生じる心臓,腎臓の障害である。この中で心臓が原因となるCRSは,type 1とtype 2であり,それらについて説明を加える。
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