東邦大微生物・感染症学講座の舘田一博教授(写真)が2月22日、薬剤耐性(AMR)と臨床検査をテーマに開かれたセミナー(主催:日本臨床検査薬協会、米国医療機器・IVD工業会)で講演し、抗菌薬の適正使用推進に向けて、「原因菌を迅速・正確に特定できる検査法が求められている」と述べた。
政府は昨年、耐性菌の出現リスクを抑えるため、2020年までに1日抗菌薬使用量を対14年比で33%減少させるとの目標を盛り込んだ『AMR対策アクションプラン』を策定した。舘田氏はこの目標について、「我々のゴールは『適正使用の推進』。数値目標の独り歩きは避けなければならない」と強調。一方で、アクションプランが感染症の診断・検査法に与える影響については、近年開発された新たな遺伝子診断法などを紹介しつつ、「2020年までに大きな進歩があるかもしれない」と期待を込めて話した。
ただ、現在の検査法については、「原因が細菌かウイルスか、細菌ならば耐性菌かどうか分かるまでに1日以上かかり、その間に抗菌薬治療の開始を迫られることがある」との課題を指摘。「30分で細菌感染症を否定できるような検査法があれば、抗菌薬の適正使用につながるのではないか」とした。
舘田氏はまた、そうした迅速な検査法の開発により、創薬の方向性が変わる可能性にも言及。「原因菌を早く特定できれば広域系抗菌薬を使う必要がなくなり、原因菌だけに効く新規薬剤の開発につながる」との見方を示した。