学童期から生活の夜型化が進み,睡眠不足が始まっている。
ナルコレプシーは中学・高校生に好発するため,学校生活への不適応を生じやすい。
成人期にはSASと睡眠不足症候群が増え,更年期になると不眠が増えてくる。
高齢期には中途覚醒や早期覚醒の不眠が目立ち,またレストレスレッグス症候群やレム睡眠行動障害を合併しやすい。
睡眠は身体的な発達や加齢,生理学的,心理学的な要因などから影響を受けて変化し,年齢ごとに特徴的な睡眠障害を呈する(表1)1)。同様に,「眠れない」という訴えにはライフステージによって様々な背景要因を考慮して対応することが重要である。
学童期,成人期,更年期,ならびに高齢期の4つのライフステージにわけ,「眠れない」患者の特徴を説明する。
学童期から青年期では,徐々に就床時刻が後退し,中学生頃より夜型化が進行する傾向にある。一方,登校時間など社会的な制限によって起床時刻が大きく変動することはなく,睡眠時間の短縮につながり,慢性的な睡眠不足にもつながっている。
睡眠不足を代償するために仮眠をとる子どもたちも多いが,仮眠によってさらに就床時刻が後退することが知られている。このような不安定な睡眠習慣をとった結果,起床困難や日中の眠気,イライラや抑うつなどの気分変動が引き起こされる。その原因としては,テレビやインターネット,スマートフォンなどのメディア接触の増加や,勉強に追われる生活,大人の生活習慣からの影響など,様々な要因が指摘されているが,共通しているのは適切な睡眠習慣が未獲得であり,心理的に未成熟ということである。
思春期・青年期はナルコレプシーや特発性過眠症の好発年齢で,特にナルコレプシーは中学・高校生に発症しやすい。ナルコレプシーは耐え難い日中の眠気や居眠り,情動脱力発作,睡眠麻痺,入眠時幻覚などを特徴とする中枢性過眠症の代表的疾患である。頻度は600人中1人であるが,日常生活の中では居眠りが目立ち,怠惰であると周囲に誤解されることが多く,学生生活への不適応やいじめの遠因となることも少なくない。
また,前述した不規則な睡眠習慣の結果,体内時計と社会的な生活リズムとが非同調し,睡眠覚醒スケジュールが望ましい時間帯からずれてしまう概日リズム睡眠─覚醒障害(circadian rhythm sleep-wake disorders:CRSWD)を生じる可能性がある。学童期には器質的な睡眠障害と環境要因による睡眠障害が混在しやすいため,丁寧な問診とともにナルコレプシーが疑われる場合には専門家(推奨:日本睡眠学会認定医療機関A型 〔www.jssr.jp〕)に紹介し,睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)と反復睡眠潜時検査(multiple sleep latency test:MSLT)を1泊2日で積極的に行うべきである。
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