医療の現場は従来,その場に患者さんがやってきて始めるサービスですから,外部に多くの情報を発信しなくても,来院の後で必要なことだけを伝えていけばよかったと言えます。入院案内などはその典型で,入院が決まるまでは必要のない情報ということになります。また,外来の案内も,毎曜日の担当医師さえわかれば,それ以上の案内は必要なし,というより情報がなくてもなんとかなったのです。受診のパターンはほとんど全国共通で,初めて病院を訪れる人だけの問題でした。
しかし,高齢化による医療費や支え合う福祉の時代を迎えて,思うがままの医療・福祉の選択ができなくなると,サービスの提供者と利用者の双方の相互理解だけでなく,まずその施設が地域や社会から「知られている」ことが医療サービスの提供にとって存在価値であり,信頼・安心といった主観的評価においても重要なファクターとなると考えられます。
情報を伝えるという面からとりわけ重視しなければならないのはマスコミの存在です。というと「医療や介護は地域における活動であって,別に世界を相手に市場拡大する企業でもなし,マスコミを味方につけて意味はあるのか」というご意見が聞こえてきます。ただ,マスコミとひと括りにいっても,全国ネットのTV局から地方局,全国紙から地方紙,ラジオ局,さらにローカルで地域に根ざした地域新聞など媒体は様々です。
残り1,355文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する