臨床病期Ⅰ期の原発性肺癌の標準術式は,肺葉切除術である
2cm以下の末梢に存在する肺癌に関しては,肺葉切除術と同等の根治性が得られる楔状切除術または区域切除術が選択されうる
積極的縮小手術としての区域切除術は,腫瘍の存在する区域を正確に把握して腫瘍マージンを確保する術式が要求される
今後,区域切除術が,一定の基準を満たす原発性肺癌に対する1つの根治的標準術式となる可能性がある
積極的縮小手術という言葉の定義がまず重要と思われる。原発性肺癌における外科治療は,主に臨床病期Ⅰ~Ⅲ期に施行されている。臨床病期Ⅰ~Ⅱ期の根治的標準術式は,日本肺癌学会による「肺癌診療ガイドライン2014年版」1)において,
a. 切除可能な肺癌に対する標準外科治療として,肺葉切除以上の術式を行うよう強く勧められる(グレードA)
b. 肺葉切除に耐術不可能な症例には縮小手術を行うよう勧められる(グレードC1)
とされており,肺葉切除以上の手術が要求されている。
外科医が肺癌に対して手術療法を行う場合,患者の耐術能の評価が必要である。肺は現時点で再生しない臓器とされており,肺切除を施行した場合,切除した肺組織分の呼吸機能低下を生じる。
前述した「肺癌診療ガイドライン2014年版」においては,「臨床病期ⅠA期,最大腫瘍径2cm以下の非小細胞肺癌に対して,画像所見,病変の位置などを勘案したうえで縮小切除(区域切除または楔状切除)を行うことを考慮してもよい(グレードC1)」とあり,エビデンスレベルはまだ低いものの,現場の外科医の判断によっては縮小手術が選択可能である。したがって,臨床病期ⅠA期の2cm以下の原発性肺癌に対して,根治性を損なわずに切除範囲を縮小することが,「積極的縮小手術」の定義であろう。
術式として想定されるのは,肺葉切除術以下であり,大きく2つにわけられる。すなわち,楔状切除術および区域切除術である。
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