肺癌に対する胸腔鏡下肺切除術は増加傾向にある
早期病期の肺癌に対する胸腔鏡下肺葉切除術は開胸術と比較して,予後,侵襲性,安全性に関して,同等ないし優れているとする報告が多い
今後は肺癌手術において,さらなる低侵襲化をめざしたアプローチ,内視鏡設備,器具が開発され,発展していくものと考える
内視鏡用手術器具やモニター画像の開発・発展により,呼吸器外科手術においても20~30cmの切開創からの開胸手術に代わり,内視鏡カメラを使用した小切開創からの胸腔鏡下手術(video-assisted thoracic surgery:VATS)が普及している(図1)。
肺癌に対するVATS肺葉切除は,1992年にLewisら1)によって初めて報告された。VATSに対する国内外で統一された定義はないが,Cancer and Leukemia Group B(CALGB)が肺癌に対するVATS肺葉切除の前向き認容性試験を行った際に用いた定義にあるように2),VATSとは「①8cm以下の小切開創またはポートから,②開胸器を使用せずに,③主たる操作をビデオモニター下に行う手術」である。同臨床試験ではVATS肺葉切除として,さらに,①肺動静脈,気管支を各々別個に処理,②肺門リンパ節の郭清またはサンプリングを施行するものとしている2)。
切除可能な肺癌に対する標準的外科治療は「肺葉切除(または肺全摘)+リンパ節郭清」であり,VATS肺葉切除においては,これらが安全かつ確実に施行されることが要求される。肺癌に対するVATSは肺葉切除以外にも,肺部分切除,区域切除,全摘においても広く行われている。
2012年の1年間に本邦で施行された肺癌手術件数は日本胸部外科学会の集計によると3万6667例(うちVATS 2万3411例,63.8%)であった3)。術式別では肺全摘571例(うちVATS 75例,13.1%),肺葉切除2万6079例(うちVATS 1万6416例,62.9%),区域切除3780例(うちVATS 2654例,70.2%),部分切除4952例(うちVATS 4135例,83.5%)であった。2007年1年間の集計4) では,肺葉切除2万647例中VATSが1万327例(50.0%)であったことと比較すると,VATS症例の割合は近年著しく増加していると言える。ただし,本邦ではこれらVATSの中に,小切開創からの直視も併用するいわゆるハイブリッドVATSも多数例含まれていることに留意すべきである(図1)。
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