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(5)社会不安障害【第2章 用語解説】[特集:向精神薬 総まとめ]

No.4709 (2014年07月26日発行) P.80

興津裕美 (東京女子医科大学精神医学教室助教)

登録日: 2016-09-01

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▶疾患概念

社会(社交)不安障害(social anxiety disorder:SAD)(DSM-Ⅳ)は,人から注目されるような場面や人との関わりをもつ場面において,自分が恥をかいたり,恥ずかしい思いをするのではないかとの強い不安が出現し,そのような場面を回避したり,たとえその場にいることができたとしても強い不安や苦痛が出現し,振戦,赤面,発汗,動悸などの身体症状を引き起こす精神疾患である1)。未治療のまま経過していることが多く,不登校の原因となり,就労,経済状況にも悪影響を及ぼすことがある。

▶疫学・病態

生涯有病率は高く,欧米では,うつ病,アルコール依存症,特定の恐怖症に次いで,4番目に多い精神疾患とされている。発症年齢は早く,ピークは10歳代であり,20歳代までに90%以上が発症し,慢性に経過すると言われている2)。大うつ病やアルコール依存症など,他の精神障害の併存率が高く,50~80%の患者は少なくとも1つの精神障害を併存していると推測されている3)

▶治療

選択的セロトニン再取込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors:SSRI)を中心とした薬物療法と認知行動療法の有効性が示されている。薬物療法は導入や継続が容易であり効果発現が早いが,副作用や治療終了時の再発率が高い点が問題となる。わが国で保険適用となっているSSRIは,フルボキサミン,パロキセチンである。ベンゾジアゼピン系抗不安薬には耐性や依存性があるため,治療初期に併用する程度が好ましい。
認知行動療法には効果が長く持続し再発率が低いというメリットはあるが,導入や継続が困難なケースがあること,実施できる医療機関や専門家が少ないことなどが問題となる。
初診時にはSADの症状のみを訴えて受診する患者は少なく,大うつ病など,他の精神疾患が併存してから受診する患者が多いと考えられており,併存疾患の治療も併せて行っていく必要がある。


●文献
1) 樋口輝彦, 他編:今日の精神疾患治療指針. 医学書院, 2012, p172-5.
2) Wittchen HV, et al:Acta Psychiatr Scand(Suppl). 2003;108:4-18.
3) Stein MB, et al:Lancet. 2008;371:1115-25.

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