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膵癌に対する重粒子線治療【第1/2相臨床試験において,高線量での化学療法同時併用治療の効果と安全性を報告】

No.4856 (2017年05月20日発行) P.55

山田 滋 (放射線医学総合研究所病院消化管腫瘍科科長)

登録日: 2017-05-18

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厚生労働省の「平成26年(2014)人口動態統計」によると,わが国の「膵の悪性新生物」による年間死亡数は3万1716人と報告されている1)。この数字は年々増加傾向にあり,悪性新生物による部位別死亡数では第4位となっている。現在,浸潤性膵管癌(以下,膵癌)に対する唯一の根治治療は手術であるが,5年生存率は20%に満たないのが現状である。さらに,手術不能である局所進行膵癌に至っては,2年生存率は10~30%であり,きわめて治療抵抗性であると言える。

重粒子線はX線治療に比較して,①優れた線量分布を有する(物理特性),②生物学的効果が大きい(生物特性),という2つの特徴を持つことから,放射線に感受性の高い臓器に囲まれた,治療抵抗性の膵癌に対しても有効性が期待されている。

放射線医学総合研究所では,局所進行膵癌に対し2003年から12回/3週間の重粒子線単独治療が開始され,07~12年に抗癌剤ゲムシタビン(G EM)併用重粒子線治療の線量増加第1/2相臨床試験が施行された。その結果,線量増加とともに生存率の向上が得られ,45.6Gy(RBE)以上照射された高線量群42例の2年生存率,生存期間中央値は48%,23.9カ月と良好な成績であった2)

本試験の結果から,高い線量においても化学療法同時併用重粒子線治療は安全に施行することが可能で,正常組織障害の頻度を増加させることなく,予後の改善にも寄与することが示された。

【文献】

1) 厚生労働省大臣官房統計情報部, 編:平成26年(2014)人口動態統計. 2015.

2) Shinoto M, et al:Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2016;95(1):498-504.

【解説】

山田 滋 放射線医学総合研究所病院消化管腫瘍科科長

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