米国精神医学会(APA)の「精神障害の診断と統計の手引き(DSM)」が2013年に第5版(DSM-5)に改訂された。それに併せて,日本精神神経学会では2014年に「DSM‒5病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」1)を発行した。従来,自閉症やアスペルガー症候群などの下位分類が設定されていた「広汎性発達障害」は,新たに「自閉スペクトラム症」と称する下位分類のない1つの診断概念となった。
わが国における近年のトピックとしては,16年に非定型抗精神病薬のリスペリドンとアリピプラゾールが,小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対して,相次いで追加承認されたことが挙げられる。ただしこれらは,コミュニケーションの異常や活動・興味の限局など,自閉スペクトラム症の中核症状が標的ではないので,注意が必要である。
現在のところ,自閉スペクトラム症の治療・支援の基本は,従来通りあくまで環境調整や認知行動療法的アプローチであり,薬物療法は補助的な位置づけである。しかし,治療目標とリスクを総合的に吟味して種類と量を決めれば,薬物療法は臨床において一助となりうる選択肢と言える。
【文献】
1) 日本精神神経学会精神科病名検討連絡会, 他:精神誌. 2014;116(6):429‒57.
【解説】
飯沢美文*1,本田秀夫*2 *1信州大学精神医学 *2信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部診療教授