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アッシャー症候群患者を取り巻く問題【視覚障害が悪化して意思伝達が困難となる】

No.4861 (2017年06月24日発行) P.50

中西 啓 (浜松医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科)

細川誠二 (浜松医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科病院准教授)

峯田周幸 (浜松医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授)

登録日: 2017-06-21

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五感の中で視覚と聴覚は最重要であり,そのうち一方に障害があってもきわめて重大であるが,両方の障害を併せ持つ人は,他人とのコミュニケーションや外界からの情報手段が二重に制限され,計り知れないほど多大なハンディキャップを負うことになる。

現在までに,約40種の視覚障害と聴覚障害を合併する疾患が知られている。その中で最も高頻度で全患者数の約半数を占める疾患がアッシャー症候群(USH)である。USHは,人口10万人に対して約3~6人の頻度で認められ,感音難聴に網膜色素変性症を合併する常染色体劣性遺伝性疾患である。

USHは難聴の程度と前庭機能障害の有無により,タイプ1~3の3つに分類される。タイプ1は高度感音難聴と高度前庭機能障害を特徴とする最も重篤なもので,言語獲得期前に人工内耳植込み術が施行されなければ言語獲得は困難となる。当院では多くのUSH患者を診察しているが,タイプ1の患者のほとんどは人工内耳植込み術を受けておらず,手話や筆談で意思伝達を行っている。

USHでは,網膜色素変性症は10歳代から発症して徐々に進行するため,年齢とともに眼症状が悪化して手話や筆談が困難となり,触読手話や接近手話などの限られた方法でしか意思伝達ができなくなる。このような状況を少しでも打開するために,遺伝学的検査などの早期診断法の確立や,意思伝達手段が限定された視聴覚障害患者を支援する体制づくりが必要である。

【参考】

▶ Nakanishi H, et al:J Hum Genet. 2010;55(12): 796-800.

【解説】

中西 啓*1,細川誠二*2,峯田周幸*3  *1浜松医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 *2同准教授 *3同教授

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